2007年5月14日月曜日

袴田事件 死刑囚の無罪を当時の裁判官が涙の告白



愛媛新聞社online
元裁判官の告白
DATE:2007/05/14 15:31

「一瞬、私のひざがガクンと折れる…倒れそうになるからだに力をこめてこらえ、青衣の男を見つめた」。免田事件で再審無罪となった免田栄さんは、処刑場へ向かう死刑囚を拘置所の窓から目にしたショックをそう語る(「死刑囚の手記」イースト・プレス)▲
 無実を訴える身に執行が現実味を増す。想像の及ばぬ恐怖だろう。極限の心理状況に置かれ続けるのはこちらも同じに違いない。一審の死刑判決から三十九年。冤罪(えんざい)を訴え、やはり再審を求めて最高裁に特別抗告中の袴田事件の袴田巌死刑囚だ▲
 その死刑囚の胸を埋めるのは一筋の光明にすがる思いか。それとも司法への抑えきれぬ怨嗟(えんさ)だろうか。やや古い話だが、一審で主任裁判官を務めた熊本典道氏が無罪を確信していると口を開いた▲
 「週刊金曜日」四月二十日号に熊本氏のインタビューがある。裁判官三人中、熊本氏ら二人が無罪側だったのが報道や自白で揺らぎ、一人が死刑へ転じたこと。そのため判決文では、無罪を強く示唆する論理構造から強引に死刑へ導いたこと。見解の客観性には異論もあろうが、衝撃的告白だ▲
 評議の秘密があるから現職裁判官なら罷免されかねない。でも一時は海外で死地を求め、人生の終盤を自覚して決意した人に大きな問題ではないだろう。裁判の信用性は重要にせよ、人権を犠牲にして成り立つのでは本末転倒になる。死刑判決に誤りはなかったのか。知りたいのはその一点だ▲
 司法の回答を、同じ重責を背負う未来の裁判員も見逃せない。

0 件のコメント: